ミガログループ "AI人" 対談 その1〜株式会社TIERO 仲 有理、山本佑資 偏

ミガログループのTIEROに所属する仲有理氏、山本佑資氏が、AI駆動開発によるスクラッチ開発への回帰やシステム開発における具体的なAI活用TIPS、SIerに求められる役割を語る。

ミガログループ "AI人" 対談 その1〜株式会社TIERO 仲 有理、山本佑資 偏

株式会社TIERO(以下TIERO)はSalesforceを用いたクラウドインテグレーションを得意とするグループ企業である。特に中堅規模の顧客へのSalesforce導入をスピード感を持って対応する事に定評がある。そんなTIEROは、AIによるイノベーションをどの様に捉え、どの様に変わろうとしているのだろうか?

TIEROを技術面からリードする仲有理さん、営業の最前線で活躍する山本祐資さんにお話を聞いた。

身振りを交えて熱心に話をする、青いジャケットを着た眼鏡の男性

TIERO:仲有理

ノートパソコンを開いたテーブルの前に座り、笑顔を見せる眼鏡の男性

TIERO:山本祐資

聞き手:鈴木将親 (アヴァント株式会社代表取締役社長兼CTO)

[1] AI駆動開発で、システム導入のトレンドはパッケージからスクラッチ開発に回帰する!?

鈴木: 山本さんは日々、顧客企業にソリューション提案をされている訳ですが、生成系AI/LLMの登場は日々の営業活動にどの様な変化をもたらしましたか?

山本: これまで、スクラッチ開発(オーダーメイドのシステム開発)から既製品のパッケージ・プラットフォームを用いたシステム導入にトレンドは傾いていました。しかし、AI駆動で開発する事で、スクラッチ開発の生産性が飛躍的に改善しましたので、今後は、お客様のご要望に合わせて一からシステムを組み上げるスクラッチ開発に回帰していくのではないかと感じています。

鈴木: AIを既存製品に組んだり、自社のソフトウェア基盤製品に取り込んで「プラットフォーム化」するなどの考え方もありますが、それではAIの強みが消えてしまって、本質から外れてしまう懸念がありますね。

山本: 折角、AI駆動によってシステム活用の自由度が上がったので、従来のソフトウェア製品やサービスの枠組みや制約を超える使い方を目指すべきだと思います。

鈴木: しかし、現状では、まだお客様はスクラッチ開発をあまり喜ばない傾向は強いと思います。スクラッチ開発が得意なアヴァントでさえ、最近は基幹業務システムの開発では既製品のパッケージやローコードプラットフォームなどを用いる事がほとんどです。AI駆動開発に変わったからといって急にお客様がスクラッチ開発を許容してくださるでしょうか?その点はどうお考えですか?

山本: 基幹業務システムを急にスクラッチ回帰するのではなく、基幹業務周辺の小規模な開発要件からAI駆動開発をご提案しています。

鈴木: 顧客企業にAI駆動開発のメリットを享受していただき、理解を深めたうえで、徐々に活用を広げていくイメージですね。かつて、サーバー環境をオンプレミスからクラウドにシフトしていく流れの中で、顧客企業からセキュリティ面を気にする声が出ていましたが、AI導入において、そういった声は出ていますか?

山本: もちろん、自社の機密情報が外部サービスに出てしまうことは多くの企業様にとって懸念材料になっています。しかし、すでにクラウド導入、SaaSの活用などを通じて、外部サービスの活用は進んでおり、すでにガイドラインがしっかり整った企業様が多い印象です。

鈴木: 外部APIとの連携なども既に常識的に行われていますからね。どの情報をどこに連携しているかを明らかにしていれば、お客様にもご心配をおかけすることは無いということですね。そういった意味では、MicrosoftさんのCopilotはお客様にとって活用しやすいAIソリューションですね。

山本: そうですね。それぞれの利用者の参照権限の範囲内しかAI学習させないと明言しているので、このことが安心材料になっている印象です。

鈴木: 既にMicrosoft365を導入されている企業は多いですし、加えてCopilotのライセンスを購入されるだけで直ぐに利用できるのも強みですね。

[2] システム開発の現場のAI化状況。大切なのは「AIにできないことは無い」と思うこと!

手振りで説明する青いジャケットの男性と、その奥でノートパソコンに向かう黒いTシャツの男性

鈴木: ではTIEROのAI駆動開発に対する取り組みを教えて下さい。

仲: 私のチームでは最近の案件では積極的にAIを活用していまして、要件定義・設計フェーズで特に効果が大きいと実感していますね。とあるお客様の案件で、大量かつフォーマットがバラバラな20ファイル程度のExcelから共通データベースを作成する必要があったんですが。実験的に、若手メンバーに3ファイル分を手作業でやらせて、その後にAIに同じ作業を任せるという流れを試したんです。結果として、

・手作業では3ファイルで約3日かかった。
・AI活用では十数ファイルを約2日で処理できた。

となり、AIを活用することで業務スピードが「倍以上」に向上することわかりました。
若手メンバーにとっても、AI活用を前提とした効率化のイメージを掴むよい学習機会になったんじゃないかと思います。

鈴木: 実際に自分が作業して大変さを実感すればこそ、AIの凄さが体感できますよね。

仲: また、Excelデータについても効率化の方法を探ることができました。Excelデータはそのままだと、あまりAIへのインプットデータとして相性が良くないのですが、PDF化して読み込ませることで項目抽出やCSV出力まで自動化できるようになったんです。PDF化した複数Excelをまとめて処理 → 項目抽出 → CSV化 の流れをAIに指示すると、フォーマットとファイルまで作成してくれるんですよね。これに加えて、類似項目を横並びに整理 → 最終アウトプット生成 まで実行することもできます。インプットファイル作成の手間が不要になるので、とても楽ですね。

鈴木: ExcelデータをPDF化してAIに与えるのは、地味だけどいいTIPSですよね (笑)

仲: 手作業ではミスが出やすいExcel項目抽出を、AIで出力 → 人間は確認だけ、という逆のフローにしたことで精度と効率が向上しました。

鈴木: 工場の中とおなじになってきますね。機械が作業したものを最後に人間が確認する、といった形で。

仲: また、Excelで書かれたフローチャート付きのバッチ処理の設計書をPDF化し、そのままAIに「この通りのバッチを作って」と依頼したら、プロンプトなしで一発でプログラム生成をしてくれたり。

鈴木: バッチプログラムはAIが大得意な分野ですよね!

仲: はい。それにしても設計部分さえ正確にできていれば、その設計書のキャプチャーを渡すだけで、正確なプログラムが組めるというのはかなり衝撃でした。識別能力も凄い。帳票形式のExcelからも、入力項目名を正確に抜き出せるんですよね。OCR(光学文字認識)でのテキストを抽出するだけではなくて、「人間が帳票を見て理解した状態」と同じ精度の抜き出し方をしてくるんです。これについて少し実験してみたんですが、住所・名前が「基本情報」というセクションに属している、といった情報のまとまりをAIは理解していました。

鈴木: 結局、何でもできちゃってますね(笑)。 全工程がAI化されていく流れが止まりそうもありませんね。

仲: ポイントは「これは多分AI化できないだろう」と思わずに、「AIにできないことは無い」と思って取り組んでみる事ですね。
案外、できないと思っていた業務もAIで自動化できてしまうものです。

鈴木: その考え方が非常に重要ですね!
それにしても、大小数多くのプロジェクトでマネージメントをして来た仲さんだからこそ、業務内でのAI活用を適切にチームに指示できているという印象も持ちました。いくらシステム開発がAIで自動化されるといっても、その全体をコーディネートできるかどうかが重要となりそうですね。

[3] AI時代に我々SIerが求められている役割は?

山本: 実はプリセールスの業務もだいぶAI化できています。

鈴木: お! ウチ(アヴァント株式会社)の営業はできてるかな? ちょっと心配になっちゃった(笑)

山本: 提案時にお客様から提供いただくドキュメント類はそれぞれ記載方法もマチマチで大量の情報が詰まっています。それらをAIでまとめられる点は非常に強みになります。
ヒアリングを通して感じた重要なポイントなどを事前にAIに伝えることで、AIの情報のまとめ方も変化します。
お客様からの要求事項が変更されたり追加されたりした場合でも、AIは直ぐに情報を再構築したり、追加したりできますので、効率的に提案資料が作成できます。実際に、機能一覧の定義を修正する際に「ワークフロー要素を定義に変えて」と指示したところ、AIが関連部分を一括で定義に書き換え、工数計算も自動で更新してもらえて。この柔軟性とスピード感は、大幅な効率化につながり、非常に有用だと感じました。

従来、提案資料作成に気を取られて、お客様への対応が遅れることを常に心配していたのですが、AIを使う事で2~3日の短いサイクルで提案資料の修正・改善を繰り返せるので、お客様へのレスポンスが早くなり、コンタクトも増やせるんですよね。
直近の案件では、提案の品質が確実に向上し、競合に対して競争力が増したという実感が得られています。

鈴木: プリセールスの分野でも「もしかしたらこの業務もAI化できるだろう」が非常に重要だということですね!お客様の課題解決でも同じことが言えますかね。様々な業種のお客様とお取引させていただく訳ですが、「もしかしたらこの業務もAI化できるだろう」「もしかしたらこの課題もAIで解決できるだろう」と思って対応させていただくことが重要ですね。

山本: 実際の営業活動の中でも感じています。ヒアリングさせていただくと、多くのお客様の課題がAIで解決できそうに思える。お客様も「AIは何でもできそうだ。多分、使えるはずだ。」とは思っていただけている事が多い。しかし、具体的にどの業務にどうやって使うかのイメージをつけるのは簡単なことではありません。

鈴木: そりゃそうか。仲さんや山本さんはITやAIのプロだもんね。お客様は各分野のプロフェッショナルであって、ITやAIのプロではない。

山本:はい、流石に現状、お客様自身で業務に適用するAIシステムを考えるのは難しいです。そこで重要になるのが我々SIerの役割で、

・普段の手作業業務をどうAIで効率化できるか
・工数削減や付加価値創出ができるか

といったことを提案する力を持つことが重要になってくると思います。

鈴木: 我々の強みは情報システム一つ一つの仕組みをすべて理解していることと、複数のシステムが連携することでどの様な活用ができるかまで考えられることですよね。
お客様が各分野のプロフェッショナルであるのと同じ様に、我々も情報システムのプロフェッショナルなので。

山本: はい。AIについてもどの様に活用するかのご提案をしていくのが我々の役割ですね。
例えば最近では、「社内に散在するExcel・PDF・Wordを整理し、ベクトル検索で紐付けて検索可能にする」といったニーズがあります。これに対して、今までですと、そのニーズに一番近しいパッケージ、サービスの導入をオススメすることが多かったのですが、どうしてもお客様のニーズとのズレが出てしまうことがありました。
しかし、AI導入を効果的にご提案する事で、ニーズに合わせたシステム構築が可能になったということです。

鈴木: AIの登場によっても、我々SIerの役割は大きく変わるわけでは無いですね。

ノートパソコンを前に置き、真剣な表情で相手を見つめる眼鏡の男性

[4] AI人材をどう育てるか?

鈴木: 我々SIerの役割はAI時代でも変わらないと思われます。ITのプロの観点から、お客様の情報化・システム活用をご支援する。
しかし、その有効な手段としてAIという武器が加わった。
結局、我々SIerはこれからどれだけAIに習熟した人材を揃えられるか? が重要になりそうだと結論付けられます。
ここからは、ミガログループのAI人材育成の取組について話をしていきましょう。

仲:まず研修は必要ですが、それだけでは人材育成は難しいです。AIの使い方、AIツールの使い方を覚えるということよりも、こういったAIを使用していての気づきポイントなどを共有していきたいです。
こういった発想があるだけでも、自分の作業のここでAI活用できる、といったアイデアがどんどん生まれてくると思うので。

鈴木: 結局、実業務でどれだけ使い倒せるかが重要ですよね。

仲:そうですね。どこにでもAIを使うというつもりで考えると、作業の効率化に繋がりますからね。AIにソースコードを読ませると、非常に精度が高いので、自分で手を動かしてコードを書く量は減って、AIに生成を任せる比率が高くなっています。
今日の会議中にも、AIにバッチ処理を作成させて、その間に別の準備作業を進められました。バッチ処理は、AIが特に得意な領域なので、効率化に直結します。
今後も「AIを使い倒す」という前提で開発を進めていくつもりですし、その中で人材が育っていくと思います。

鈴木: エンジニアは依然として「言語を覚える」「開発環境を使えるようになる」「このフレームワークの使い方を覚える」といった従来の学習プロセスに縛られているケースが多いです。
AIについても体系的にまとまったもので学びたいと思う向きが強く見られます。しかしAIはまだ発展途上で、コモディティ化された技術領域ではありません。まずは「目的に応じてAIを自由に使い倒す」ことがなにより重要だと感じます。体系化されるまで待っていては取り残されますね。

山本: AIを使わない人よりは、AIを使っている人の方が確実に作業ペースは早いので、取り残されないために、あるいは自分が一番パフォーマンスを出すためにも、AIを使うしかないですね。

仲: 改めて「AIにできないことは無い」と一旦思ってみることも重要ですね。

鈴木:そうですね。

本日はお時間いただきありがとうございました!

MEMBER / ライター
鈴木 将親
鈴木 将親代表取締役社長兼CTO / アヴァント株式会社

システムコンサルタント/アーキテクトとして、主に不動産会社をクライアントとして、全社のシステム戦略立案や基幹システムの基盤設計などを支援。過去に大手SIerにおいて大規模プロジェクトのPM実績を多く持つ。経営/PM/システムアーキテクトの三つの視点での対応が可能。AXiSの編集長としてグループ会社との対談を通じ、AIからSI業界についての情報発信を幅広く行う。

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