AXにホームズ誕生!? SES経験者がAXの門を叩くことになった件

SESからAX(AIトランスフォーメーション)分野への挑戦は遅くありません。実務で培った仕様書の読み込みや非効率を見抜くSESでの経験こそが、AX現場で発生する「無自覚の非効率」を防ぐ強力な武器になる理由を解説します。

AXにホームズ誕生!? SES経験者がAXの門を叩くことになった件

むしろ今始める!! AXに出遅れたエンジニアへ

SESの経験はあるけどAXはやったことない...

でも、これから挑戦してみたい! という方に向けて

私も皆さんと同じ状況にあります。

今回は、従来のSES→AXへ挑戦する意義を共有したいと思い、筆を執りました。

生成AIを業務に導入する話が目新しかったのも束の間、

駅を歩くだけでもAX支援の広告を見かけるようになりました。

飛躍的に成長するAIに足並みを合わせるように

AXの成果が次々と発表されているのが今のエンジニア業界です。

従来のSESのエンジニアの中には、

この変化に乗り遅れてしまったと思っている方もいるのではないでしょうか。

どうしても現場常駐だと、顧客のセキュリティなどの理由から

AIの利用が制限されることが珍しくありません。

私もSESとして現場常駐することが多く、AXの知見は乏しいですし、

特に現場経験豊富なベテランの方だと

「業務でAIを使うなんて時代ではなかった」

「AIって一度伝えた業務内容は覚えていてくれるの?」

と「AIよくわからない」がにじみ出たお話を実際に聞いたことがあります。

つまり、業務上AIに縁がないエンジニアは、AXから置いて行かれやすくなります。

そんな折、私はAXメインの業務をやってみないかとお誘いをいただきました。

AXに触れてみたいという思いで、そのお話を受けることにしましたが、

既にAXに触れている先達に追いつけるのだろうかと不安な気持ちもありました。

ですが、AXには詳しいけどSESの経験に乏しい方にも悩みがあることを知りました。

エンタープライズの現場で身に着く知識が足りなくて、

AIをうまく使いこなせていない...というのです。

これって、SESからAXに参入したい我々がフォローできる場所ではないでしょうか。

ここから、どのような知識・視点をAXに持ち込むべきかについて見ていこうと思います。

AXのために毒からワクチンを作る

そもそも、AXって何のためにやるものでしょうか。

よく聞くキーワードは「効率化」です。

それは、顧客業務のみならずAXを提供する側にも言えることです。

今までの現場を振り返ってみてください。

果たして、その現場での作業は効率が良かったですか?

私は直近で経験した現場だけでも共通する「非効率」を見つけています。

分類ごとに見ていきましょう。

【管理不足・ルールが曖昧】

・最新の設計書がわからない

・設計書・資料によって表記ブレや内容の齟齬がある

⇒仕様理解の遅れや認識齟齬が生まれ、実装やテストに影響が出る

【コミュニケーション不足】

・人によって作業内容や作業予定の認識が異なる

・「聞いてた話と違う」が起こる

・作業担当や進捗がブラックボックス化

⇒手戻りのリスクが高い

⇒定例で担当や進捗の確認に時間を取られる

【知識・理解不足】

・設計書やテストケースが要件定義とずれている

(作成者に確認したところ、内容の理解が不十分なまま成果物を提出したことが発覚)

・レビューOKされたはずの成果物なのに、後から大量の不備が発覚

⇒実装・テストの段階で設計書等の修正に時間を取られる

⇒最悪の場合、設計書の仕様変更で大きな手戻りが発生する

これらが、主に私が感じていた現場の「非効率」です。

例えるなら、円滑な作業を妨害する「毒」といったところでしょうか。

AXで「効率化」を図る以前に大事なことは、

非効率という「毒」を研究して、

効率化を妨げないために「ワクチン」を生み出すことだと思うのです。

ところが、この「毒」はSESの現場のみならず、AXの現場にも潜んでいます。

「犯人はお前だ!!」 AXを蝕む「毒」の正体を暴く

AXを蝕む「毒」、それは「無自覚の非効率」です。

実は、AXで業務を進める上でもエンタープライズの現場と同じように

「非効率」が発生しています。

「でも、あなたAXの経験ないんでしょ? どうしてそんなことがわかるんですか!!」

そう思った方に、私の経験だけでも言える根拠を2つ提示します。

・AI生成の質は「入力」のしつけと「出力」のレビューに依存すること

・AX経験者が、知識が少ないことを悩んでいること

1つ目は、社内のAI研修やAXを主題とした交流の場で学んだこと。

2つ目も社内交流の場で聞いたお話です。

冒頭でも述べた、SES経験者がフォローできそうなところですね。

これらだけでも、「毒」がAXをどのように蝕むのか推測できます。

【管理不足・ルールが曖昧】

・要件定義と仕様がずれる

⇒手戻りのリスク・要件定義と仕様のズレを再確認する時間を要する

 AIの仕様誤りがないか、命令者との認識がズレていないか確認するなど対策が必要

・表記ブレが混在し、誤解を招く設計書が生成される(ファイル名含む)

⇒AIは表記が1文字違うだけで想定外の結果を出すことがある

 ネーミングルールの設定などで対策する

【コミュニケーション不足】

・曖昧な「入力」をすると想定した成果が得られない(人とのコミュニケーションと同じ)

⇒期待した回答を得るには、条件や目的を明確に伝えてAIを「しつけ」する必要がある

・作業担当・進捗・変更の管理が曖昧

⇒現場の管理と同じ課題が発生する

 複数のAIエージェントを使用する場合、役割を明確にしたり

 進捗や変更管理の見える化で管理漏れを防いだりするなど対策が求められる

【知識・理解不足】

・「入力」や、「出力」に対するレビューの精度が落ちる

⇒成果物の誤りに気づけないと大きな手戻りのリスクがある

 事前に要件定義や設計書の内容・使用する言語の基礎等を十分に理解することが求められる

これらは意識して対策しないと、気づかぬうちにAXの作業を蝕んでいきます。

AXに潜む「毒」を、「無自覚の非効率」と名付けた所以です。

特に【知識・理解不足】は、エンタープライズの現場で設計書を見る目を養ったり

自身の手でSQLやソースコードを作成・修正したりしてみないと

知識や経験として身に着けるのは大変だと思います。

机上の知識としての成功・失敗例ではなく

・自分や周りの人が質の悪い設計に振り回される苦しみの声

・なぜ、ダメな設計書やソースコードができてしまったのかの背景

・PJが大きいほど、よい成果物とダメな成果物の比較ができる

・手を動かして作った成果物がエラー・指摘だらけになった時の苦悶と疑問

私はそういった経験を積むごとに、自分の中の「よい成果物」の定義が更新されていきました。

他のSES経験者も同じく、特にベテランであるほど、より洗練された感覚を持っていると思います。

いわば、様々な「毒」の特性と対処法を蓄積していくようなものです。

故に、SES経験者はAXに潜む「無自覚の非効率」という「毒」を暴く役に最適なのです。

まとめ――私たちがAX界のシャーロック・ホームズになる

ここまで、なぜSESの経験がAXに活きるのかをお話してきました。

SES現場だから養成できた技術・知識・経験で

AX業務専門の方が気づきにくい「無自覚の非効率」を暴くこと。

それが私たちSES経験者の強みであり、今からAXに参入する意義でした。

ですが、「暴く」ことが真の目的ではありません。

「毒」に対する「ワクチン」を作成し、「毒」を予防するのです。

探偵は犯人を暴き事件を解決しますが、

事件が起きた時点で被害は出てしまっているのです。

現場なら、インシデントやトラブル・炎上案件が発生してしまった後です。

世界的に有名な探偵であるシャーロック・ホームズは

ただ事件を暴くだけの存在ではありませんでした。

例えば、

現場に先回りして事件が起きる前に犯人を取り押さえたり

各地で犯罪を手引きするモリアーティと対決して未来の犯罪を阻止したり。

私は、SES経験者の知識と経験で

非効率という「毒」を事前に発見し、適切な対策を考えて予防する。

そんな、ホームズのような存在を目指して

これから始まるAXの業務に挑戦しようと思います。

同じ想いを持つ方が現れることを期待して

「私たち」がAX界のシャーロック・ホームズになる

というスローガンとともに締めたいと思います。

MEMBER / ライター
いちじくエンジニア/アヴァント株式会社

業界3年目 SES現場での経験を活かして、これからAIの勉強、業務利用を行ないたい。

私たちについて

AX——AIトランスフォーメーションとは、何なのか。
その答えを、言葉ではなく現場から見せていくメディアです。

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