AI時代に従来の資格勉強は必要なのか――等速直線運動する魚
生成AI時代における資格勉強の意義を、JavaSilverや基本情報技術者の取得経験から考察。「知っている」ことこそがAIを使いこなす武器となり、資格勉強はその知識を体系的に得るための有効な手段であることを解説します。
もう資格勉強は無駄?
突然ですが質問です!
あなたは業務に関わる資格を持っている、あるいは取得を考えていますか?
また、その資格は「AI時代でも通用するものですか?」
生成AIがすっかり社会に浸透した昨今、
働き方が変わってくるにつれて求められるスキルも変化しています。
資格勉強は自己研鑽の方法として、わかりやすい選択肢の1つでしょう。
ですが、働き方を変えてしまうような技術を前に従来の資格は通用するのでしょうか。
「せっかく勉強したのに、活用できなかったら悲しいよね...」
「時間もお金もかかるから失敗したくない」
私は、そんな疑問や不安を持っている方に伝えたいです。
「目的を明確にすれば、AI時代においても資格勉強は無駄になりません」
なぜ、そんなことが言えるのか。
IT初心者だった私が、
「JavaSilver」「基本情報技術者試験」を取得して思ったことを踏まえてお話します。
AIに敗北した、その先で
生成AIが普及するよりも前から、「AIに奪われない仕事をしよう」という話題はありました。
エンジニアであれば、プログラミングはAIに代替されるが上流工程は生き残るというように。
しかし、今では上流から下流まで一貫してAI駆動開発を行う事例が出ています。
何年もかけてPLになった人と同じレベルの仕事をAIがこなせるというのです。
実際に私も「自分のスキル」がAIの足元にも及ばなかった経験をしました。
私はエンジニア歴が浅いので作業者レベルの話ですが、
5日かけて行ったプログラムの保守改修作業を
AIは半日で達成しました。
ただ早いのではなく、改修内容も私の想定通りという形で。
確かに私は無力感を覚えました。
しかし、同時に何かを見落としているような違和感も覚えましたが、
その時点ではうまく言語化できませんでした。
ただ確かなのは
いつしか世の中は「AIに奪われない仕事をしよう」から「人間ができることは何か」に変わっていたということです。
そんな体験から2ヵ月後
AI駆動開発実績のあるメンター指導の下、自社のAI研修を受講しました。
AI社会を生きるエンジニアとして
「正確なAIへの命令」「AIが出力した内容のレビュー」ができるようになってほしいと言われ、
基本設計~テストまでをAIに行わせる流れを経験しました。
先駆者の言葉に倣い、
まずはAIの「入力」「出力」をうまく扱えるようになることを目標としましたが
……ダメダメでした。
その日に初めて見た架空の案件であり、
ましてや、私は設計~テストまでの経験も少ないのです。
結果、正確な命令やレビューができない状態のまま先に進んでしまいました。
ですが、私はふと思いました。
以前に保守改修をAIにやらせた際は、AIの出力した改修案をレビューし、
自信を持ってGOサインを出せたではないかと。
その2つの事例、違うのは「知っているかどうか」です。
案件の内容を知っているか。
改修の背景を知っているか。
使われている技術を知っているか。
研修時の私はほとんど知らなかった。
知らないことは指示できません。
知らないことはレビューできません。
案件を知るにも、前提の設計や技術の知識が乏しく時間がかかります。
つまり、知らなければAIを使いこなせない。
逆に言えば、「知っている」なら5日の作業を半日にすることもできるわけです。
先の改修作業の例は「知っている」前提でよい成果を出せたのであり、
無力感ではなく、むしろ「知っている」ことに自信を持つべきなのだと、私は気づきました。
等速直線運動とシュールストレミング
「等速直線運動」とは、中学校の物理で習う用語です。
「シュールストレミング」とは強い臭いを放つ食べ物です。
私はその程度のことしか知らないし、そのことだけは知っています。
学生時代、文芸部だった私は
「等速直線運動」する「シュールストレミング」を題材とした短編を書き、
「等速直線運動するシュールストレミング」の人だと部内で言われるようになりました。
一見すると下らないエピソードですが、
私は「知っている」ことの強みがよく出ている事例だと思います。
例え荒い粒度でも
知ってさえいれば「創造」「判断」のきっかけになるということです。
AI研修以降、私は「知っている」ことに可能性を感じました。
というのも、
エンジニアとして働く中で「知っている」に助けられた事例をいくつも思い出したからです。
例えば、先の改修作業であれば
・JavaSilverで学んだオブジェクト言語の概要・知識
・基本情報技術者試験で学んだ広範囲にわたるITの基礎
これらが土台にあったからこそ、1から学ぶより早く正確に案件概要やソースコードを理解し、
AIが出した出力に根拠を持って意見を言えました。
このような経験を経て、私は資格勉強をする意義を理解することができたと思います。
「不合格」なら資格としてのメリットはなく
「合格」しても、その分野の即戦力にはなりがたい。
JavaSilverを取得した新人が、急に開発の現場で大活躍できるわけではありません。
「資格保持者の優位性」でも「即戦力としての技術」でもなく
「知っている」を増やすための勉強を、資格取得という分かりやすいゴールに向けてできること。
それこそが資格勉強の利点だと私は思います。
AI時代だからこそ、知識はより必要です。
これから知識を増やす若手も、今までの知見があるベテランも等しく
AIへの正確な「命令」「出力内容の判断」、それを行うための素早い案件や業務の内容理解のために
「知っている」は今後も強い武器となるでしょう。


