なぜAnthropicは新モデルを『Fable(寓話)』と名付けたのか?

Anthropic社のAIモデル「Fable 5」と未公開モデル「Mythos」の名称を起点に、民俗学者・柳田國男の視点から神話と寓話の違いを考察。safeguardsによる制限とAIへの信仰心について綴ります。

なぜAnthropicは新モデルを『Fable(寓話)』と名付けたのか?

Anthropic社が6月のはじめに公開したモデルの名前は『Fable5』フェイブル、気にするのはエフとエルの発音ぐらいで、少し前にAI関係の話題を独占した『Mythos』とは雲泥の差がある。今でこそミュトスで固まりつつある読み方も、はじめの頃はミトスやミュソスなどと揺らぎが激しかった。

今度の名前は読みやすいな、と思った。

『Fable』フェイブルは、寓話を意味する

寓話とは

  1. 登場させた動物の対話・行動などに例えを借り、深刻な内容を持つ処世訓を印象深く大衆に訴える目的の話。
  2. かつて神話であったもの。

MythosとFableの違いをAnthropic社は "safeguards" と説明している。システム開発の文脈においてこの単語は誤作動や不正利用、データ損失などの意図しない動作を防ぐ仕組みのことを指す。

『Mythos』ミュトスは、神話を意味する

Mythosは古代ギリシャ語で、神話の意味を持つ。その神話に匹敵する性能を持ちながら、悪用されないよう厳重な対策が施されたモデルが寓話の名を与えられた。

寓話は至るところで語られている。ニュースでも、SNSでも、動画でも、その名前を聞かない日は無い。一方で神話は未だ公開されず、存在だけが語り継がれている。まるで本物の神話のように。

神話とは

神話とは「天地の創造を擬人的に説明し、森羅万象に宿る霊の存在や、民族の祖神の活躍を述べる物語」だという。神話はそれを信仰する人々を結び、価値観を共有し、文化を形作る。

日本神話を丸々信じることがなくなっても、あらゆるものに神が宿る「八百万の神」の考え方は今も根付き、AIという無機質な存在に人性を見出す。チャッピーに恋をする人間を笑いこそすれ、気が狂ったとは思わない。

神話と寓話の違いは何か。

民俗学者の柳田國男はそれを信仰だと記した。信仰の弛んだ神話が娯楽に供され、零落し、変化したものが寓話であると。零落と言い切るところに隔絶がある。変化は一方向であり、寓話は神話になり得ない。

Fableも同じだ。"safeguards" を取り外し、その性能を余すところなく発揮したとしても、Mythosのような信仰を集めることはない。寓話は寓話であり、FableはFableのまま、他のモデル———作品や詩や俳句に紛れていく。

あるいはMythosでさえ、零落は遠くないのかもしれない。

【参考】

Anthropic - Claude Fable 5 and Claude Mythos 5
https://www.anthropic.com/news/claude-fable-5-mythos-5

Scientific Reports - Human cooperation with artificial agents varies across countries
https://www.nature.com/articles/s41598-025-92977-8

柳田國男 - 桃太郎の誕生
https://www.kadokawa.co.jp/product/321302000216/

寓話1.と神話の語義は新明解国語辞典から引用

MEMBER / ライター
tks
tksエンジニア / DXYZ株式会社

2024年4月にDXYZ株式会社に入社後、オフィスやマンション、ホテル、決済など幅広い分野でFreeiDの連携サービスを開発。

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