最近流行りのAIアプリ開発ノーコードツールの比較・実施例

OpenAIのAgentKitやGoogleのOpalなど、最新のAIアプリ開発ノーコードツールを比較。Difyとの違いやハイブリッドリサーチ型アシスタントの構築例、ビジネス・開発双方への影響と使い分けを解説します。

最近流行りのAIアプリ開発ノーコードツールの比較・実施例

1. 導入

2025年10月6日に、OpenAIが、AIエージェントを簡単に作ってアプリとして自社サイトなどに組み込めるツールセットとして、「AgentKit」を発表しました。特に、「AgentKit」のコンポーネントの1つである「Agent Builder」は非エンジニアがノーコードでAIエージェントの作成を行えるツールです。

その翌日の、2025年10月7日には、google(googleの研究開発機関であるgoogle labs)が、AIミニアプリをノーコードで作成できるツールである「Opal」の日本を含む15地域への展開を発表しました(2025年7月に既に他国ではリリースされていた)。

ノーコード(ローコード)でAIエージェント(AIアプリ)を開発できるツールはこれまでにもあり、開発からデプロイまで柔軟に行えるOSSのDifyなどが有名です。そこへ、モデルとプラットフォームを併せ持つOpenAIやモデルだけでなくクラウド基盤を擁するgoogleがこのようなツールを展開することによるビジネス/開発双方への影響は大きいと思います。

本稿では、AIアプリ開発の為のノーコードツールの紹介・比較を簡単に行いたいと思います。

2. ノーコードツールとは

2.1 AIアプリ開発の構成要素

ノーコードツールの説明の前に、まずはAIアプリの開発ではどのような要素が必要なのかを整理します。 一般的なアプリの開発と大差ないかもしれませんが、大雑把に以下の4層で分けて考えるとわかりやすいです。

層名役割主な例
UI層ユーザーが触る画面・チャット・埋め込みウィジェットDify Hosted App / Widget、社内ポータル、Web/Mobile UI、Slackボット など
アプリ開発層プロンプト/RAG/ツール呼び出しの制御フローやAIロジック、ノード連携・評価・ガードDify(フロー)、Python/LangChain(chain/Agent)、OpenAI Agent Builder、Langflow
AIサービス層検索・埋め込み・再ランク・知識検索・翻訳などのAPI(ノードの中身になりがち)OpenAI/Claude/Gemini API、AWS Kendraなど
運用インフラ層認証(SSO/MFA)、ネットワーク(VPC/PrivateLink)、鍵管理、監査ログ、スケール/運用AWS/Azure/GCP、Kubernetes、Cloud Run、App Service、SIEM、Observability基盤

自分でスクラッチでAIアプリを開発しようと思うと、例えば以下の構成で、全ての層を開発管理しなくてはならならないので結構大変です(AIサービス層は基本他サービスを使うだけ)。

観点 / 層通常の開発
UI層Next.jsでチャット画面実装、Auth0で認証
アプリ開発層LangChainでRAGフロー実装、ツール呼び出し・ガードをコードで作成
AIサービス層OpenAI API等を選定・接続
運用インフラ層Cloud Run / VPC、KMS、監査ログ、CI/CDを自前構築・運用

ノーコードツールは、主に上記の「アプリ開発層」を担いますが、googleのOpalやDifyなどは、(利用の仕方次第では)全ての層を賄いそれ単体のみで皆が使えるAIアプリを作る事ができます。「アプリ開発層」の開発が簡単になるだけでなく、他の層も意識する必要がなくなる為、AIアプリ開発のハードルが一気に下がります。

勿論、セキュリティ要件次第で必要なデプロイ方法が変わります。

2.2 ノーコードツールの例(Difyを題材)

ノーコードツールでは一般的に、コード開発で行う事(処理/分岐/フローの記述)をGUIで視覚的に行う為に、ノード(処理)とリンク(処理の順番)の形式をとることが多いです。Difyでの開発の例を記載します。

UIイメージ

Difyで構築した就業規則チャットボットが、ユーザーからの勤務条件の質問に対して回答を出力しているチャット画面

このユースケースは、ユーザー入力を起点に、社内ナレッジ検索(RAG)+Web検索を組み合わせて回答を生成する 「ハイブリッドリサーチ型AIアシスタント」の例です。

DifyのワークフローDSLとして構成されており、UI上でノードを接続するだけで複数の検索・要約・出力処理を自動化できます。

ワークフローの全体構成

フェーズノード主な処理内容補足
① ユーザー入力開始就業規則に関するユーザーの質問や要望を受け取るチャットフローで実装
② 社内検索(RAG)Agent(別途作成した検索ツール設定)社内ナレッジベース(PDF・Word・Confluence等)を検索し、類似ドキュメントを抽出内部ベクトルDBを利用しスコア上位文書を取得
③ WEB検索(Search Tool)Agent(検索ツール設定)外部検索APIを利用し、最新情報を取得社内情報に存在しない内容を補完
④ 要約・統合生成(LLM)LLMMRAG結果+Web検索結果を統合し、回答文を生成社内+外部の情報を文脈統合して要約/出展記載
⑤ 出力回答チャットUIチャットフローなので会話継続

2.3 ノーコードツールのデプロイ例

Difyの場合、開発したワークフローをアプリ化して皆が使えるようにするのに幾つか方法があります。 Difyの機能で全て賄うSaaS配布だとビジネス側でも簡単に配布ができますが、社内のセキュリティ要件を満たすか確認は必要になります。

デプロイ方法による構成の違い

層名Dify (SaaS配布)Dify(セルフホスト)
UI層Hosted App / Widget / 共有URL自社UIに埋め込み(社内ポータル/Next.js+SSO)
アプリ開発層FlowでRAG/ツール構成(Difyの主担当)FlowでRAG/ツール構成(同じ)
AIサービス層GUIでモデル/ベクタDB接続同一リージョン固定+社内許可API/ベクタDBのみ(PrivateLinkなど)
運用インフラ層SaaSにお任せVPC/オンプレでセルフホスト(ECS/EKS等)、鍵/ログは社内集約

Dify (SaaS配布)の実行イメージ

Difyのワークフロー編集画面。開始、社内情報検索、データ加工などのノードを接続し、ブロック追加メニューを表示している

3. OpenAI Agent Builderによるユースケース構築例(ハイブリッドリサーチ型AIアプリ)

ここでは、2.2で紹介した「社内ナレッジ+Web検索を統合して回答を生成する」 ハイブリッドリサーチ型AIアシスタントを、OpenAIのAgent Builderで再現して使用感を確かめましたので紹介します。

ワークフローの全体構成

フェーズノード主な処理内容補足
① ユーザー入力Startユーザーの質問を受け取るチャットUIで会話形式の入力
② 社内検索(RAG)Agent(社内情報ベクトルDB検索ツール設定)ファイル検索ツールを使用し、就業規則など社内文書から情報を取得File searchツールを活用
③ 状態保存Set state検索結果を状態として保持し、次の処理で利用グローバル変数に社内検索結果を保持
④ WEB検索(Search Tool)Agent(Web検索ツール設定)インターネット上の最新情報を取得WEB検索ツール使用
⑤ 統合応答生成(LLM)Agent社内外検索結果を統合し、要約・回答を生成

UIイメージ

Difyの後継ツールであるCozeのワークフロー編集画面。社内検索、WEB検索などのノードが配置され、社内検索の詳細設定を表示している

使用感と補足ポイント

使用してみてDifyより良かった点

・会話履歴を考慮したAgentのワークフローを特に意識せず簡易的に作れる(Difyより簡単で調べる必要もなかった)

・OpenAIのストレージに資料をアップロードしベクトルDB化するのも簡単にできた。

・Difyだと再検索などを加味したRAG検索を行うには、RAG検索をツール化してからAgentに登録する必要があったが、こちらはAgentにベクトルDBを指定するだけで済んだ。

制約・注意点

・並列処理のワークフロー(1つのノードから複数のリンク)は作れなそう

・Difyで出来るRAGは細かな設定(メタデータの設定やハイブリッド検索など)は簡単にはできなさそう

デプロイについて

Agent Builderはあくまでもワークフローを開発するツールなので、作成したワークフローをデプロイして皆に使ってもらうにはChatKitツールを用いてチャット用UIを作成し自社ホームページなどでに組み込む必要がある。

ただ、個人で使うだけならプレビューで利用可能。

プレビューイメージ

Cozeのワークフロープレビュー画面。ユーザーの質問に対し、社内ファイルを検索して生成された回答が表示されている

4. Google Opalによるユースケース試作(ハイブリッドリサーチ型AIアプリ)

ここでは、同じ「社内ナレッジ+Web検索を組み合わせた回答生成アプリ」を、Googleが提供するOpalで試作した例を紹介します。

OpalはGoogle Workspaceとの統合を前提とした軽量ノーコード環境で、自然言語ベースでアプリを構成できます。(のはずが、エラーでうまく動かなかったので今回は手動で作成……)。

ワークフローの全体構成

フェーズノード主な処理内容補足
① ユーザー入力UserInputユーザーの質問を受け取る自然文で入力。音声入力も可能
② 社内資料指定AddAssets(File UploadやGoogle Driveなど設定)外部データの連携Drive指定の場合は、Google Drive APIで自動検索
③ 社内検索(RAG)Generate(連携された資料を参照するように指示)社内Drive内の文書を検索し、回答材料を抽出Google Drive APIで自動検索
④ WEB検索Generate(Web検索するように指示)Web検索を行い、社外情報を補完現在は限定的(Gemini検索)
⑤ 応答生成(LLM)Generate社内外情報を統合し、回答を生成
⑥ 出力Outputチャット画面に回答を出力Previewタブで結果確認

UIイメージ

DifyとCozeの競合となるDify's Workspaceでのワークフロー編集と、右側のプレビューエリアでのチャット回答画面

使用感と補足ポイント

使用してみてDifyより良かった点

・単発Agentのワークフローを適当操作しても作れる(Difyより簡単で調べる必要もなかった)

・「Google Drive内の就業規則を参照して回答して」など、プロンプト的指示でワークフローを生成できる。 ただし、細かい制御(例:条件分岐・変数操作)は現状困難。 *実際今回のワークフローも、自動だとエラーになってしまったので、手動で作成した

・Driveなど との連携が非常にスムーズ。例えばDrive上のWord文書をそのまま検索対象にできる。

制約・注意点

・外部情報はファイル連携はできるがベクトルDB化し連携できていない。

・継続的な会話の仕方が(ぱっと見は)分からなかった。

・他のツールでは変数が定義されていたり・定義出来たりしたが、opalはそこら変の機能が(ぱっと見)なさそうなので厳密な制御が難しい。

デプロイについて

Opalは「ShareApp」機能を用いればそのままデプロイ(共有)し皆に使って貰う事ができるので、ビジネス側の人が簡単にAPIアプリ開発をできる素晴らしいツールになりそうな気配がします。

5. ノーコード/ローコード主要ツールの簡易比較

これまで紹介してきた各ツールの概要とメリデメを以下の表にまとめ比較します。

項目DifyOpenAI Agent BuilderGoogle Opal
開発元LangGeniusOpenAIGoogle
概要・UIのみでAIアプリのワークフローを柔軟に開発共有可能なツールの代表格・OpenAIのサービスとの連携を強味とし、UIのみでAIアプリのワークフローを簡単に開発可能なツール・AgentKitの中のノーコードツール担当・Googleサービスとの連携を強味とし、UIのみでAIアプリのワークフローを簡単に開発共有可能なツール
メリット・豊富で柔軟なノードにより自由度が高い・UI完結でRAG管理まで可能・様々な内部・外部ツールと連携可能・配布が早い・マルチモデル(OpenAI/Claude/Gemini/Local等)・デプロイの選択肢が豊富でセルフホストで閉域運用可・UI完結でRAG管理まで可能・様々な内部・外部ツールと連携可能・Evals/Guard/Traceでコンプライアンス順守支援有・OpenAIモデルの品質を即利用可・プレビュー機能で個人の利用は可能・ウィジェット/埋め込みが容易・文章指示だけでワークフローを生成・Gmail/Drive/Docsと直結・リンク共有が簡単
デメリット・柔軟性が高い分多少学習コストは高い・OpenAI専用(マルチモデル不可)・閉域不可/セルフホスト不可・実験的で機能限定・外部連携はGoogle中心・閉域不可、監査ログ等は限定

6. まとめと所感

今回の調査で簡単に触った感触から推奨される用途をビジネス/開発別に表に簡潔にまとめてみました。

Biz向け(企画・業務側)

目的(Biz)Dify(SaaS)Dify(セルフホスト)OpenAI Agent BuilderGoogle Opal
各自利用/企画PoC(素早く)
部門配布(素早く共有)○ (ChatKit必要)
Google資産の活用(Drive/Docs)
統制・監査が厳しい××

Dev向け(開発・IT)

目的(Dev)Dify(SaaS)Dify(セルフホスト)OpenAI Agent BuilderGoogle OpalPython / LangChain
開発PoC(技術検証)
既存API/DB深連携
閉域・SSO・監査××
高度RAG/評価の作り込み

現状では、セキュリティ要件や機能不足・カスタマイズ性不足により、これまでのtoolが完全に置き換わる事はないと思います。

ただ、ビジネス側が自らAIエージェントを開発し利用していく流れは加速していく事が想定されます。

そして、それに伴いビジネス側とエンジニア側の境界が曖昧になってきます。 エンジニア側は、安全性・運用(SSO/監査/閉域)・信頼性・コスト最適化を押さえつつ、ビジネス側に滲みだしながら、ワークフロー最適化、RAG設計や評価、ガードレールなどで品質を継続的に高める役割に重きを置いていく事が必要になってくるかもしれません。

7. (付録)ノーコードツールの(簡易)機能比較

記事作成にあたって副産物的に生成された機能ごとの比較表を以下に記載します。

本比較表は、記事作成過程で収集した公開情報や編集部での検証・体験をもとに整理したものです。 使用や導入にあたっては、各社の公式資料や個別のご確認をお願いいたします。

機能項目Dify(LangGenius)OpenAI Agent Builder(OpenAI)Google Opal(Google)
ノード種類(実装)・Prompt / Tool / 条件分岐 / API / RAG / Pythonブロック・Agent / File Search / MCP / Guard / If-Else / Loop / Human Approval / Transform・入力 / モデル実行 / 外部呼出 / 出力(自動生成ステップ)
対応モデル・マルチモデル:OpenAI / Claude / Gemini / Mistral / Local・OpenAIモデル限定・Gemini中心
RAG機能・あり(UI完結):ナレッジ管理 / ベクトル検索・メタデータ / ハイブリッド検索・外部検索 / 再ランク拡張・あり:File Search+アップロード文書/評価・最適化と連携・限定的:Drive読み込み / 要約などの簡易処理
外部連携・API / Webhook、Slack / Sheets / Drive、Zapier 等/HTTPノードで任意API・Connector Registry(Slack / Drive等)/MCPで独自拡張・Google中心(Gmail / Drive / Docs)
デプロイ・Webアプリ / Widget / REST API/セルフホスト可・OpenAIクラウドで共有/ChatKitで埋め込み・リンク共有(Labs内)/埋め込み不可
セキュリティ・VPC / SSO / 監査:セルフホストで自社統制/クラウド版はテナント隔離・SaaS境界、SSO・データ不使用設定想定/閉域・オンプレ不可・Google認証ベース、閉域不可/監査・バージョン管理は限定
コスト(目安)クラウド版プランあり(無料Sandbox〜有料)/セルフホストは自社インフラ費+モデル費。<br>参考:有料プラン例 $59/月(参考情報)+モデルAPI費用。開発・編集は無料(“Run”時に従量課金)+モデル料金。実験的(Labs)で現状無料提供。正式版ではGemini Business/Enterprise配下での利用が想定され、今後課金化の可能性あり。
MEMBER / ライター
新妻 康弘
新妻 康弘AIストラテジスト / ミガロホールディングス株式会社

純粋数学博士。15年以上にわたり、製造・広告・金融・人材・清掃等の分野で、事業者側・コンサル側の両側からデータ活用に携わっています。時代に合わせて、データ分析官・データサイエンティスト・DXコンサル・生成AIエンジニアと職種を変え必死に生きております。

私たちについて

AX——AIトランスフォーメーションとは、何なのか。
その答えを、言葉ではなく現場から見せていくメディアです。

お問い合わせ

取材・寄稿・協業・AI導入支援のご相談は、こちらからどうぞ。