FreeiDとAIエンジニア導入 / AIと創造性
顔認証サービス「FreeiD」を展開するDXYZでの自立型AIエンジニア「Devin」の検証事例を紹介。後半は書籍『レンブラントの身震い』を交え、AIがもたらす「創造性」の本質や人間との境界、未来の可能性について考察します。

FreeiDとAIエンジニア導入の話
はじめに
ここ数年でAIと呼ばれるものが急速に進化しエンジニアの働き方も変化しました。
システムの構想はチャットボットに投げ、ソースコードの実装や修正はAIエージェントが行い、エンジニアは「手を動かす人」から「作業を指示し、成果を確認する人」へと役割がシフトしつつあります。
そもそもDXYZの展開する FreeiD も顔認証AIをコアとするサービスです。

AIが進化し続ける以上、エンジニアにとっては戦う相手ではなく使うものとして認識するべきで、重要なのは何をどう使うかだと考えています。
その中で今回は「何を」の部分にポイントを絞り、AIエンジニア Devin について取り上げていきます。
Devinとは
Devinは1年前に登場したAIエンジニアで、注目されているのは完全自立型という点です。
Devinは自身で開発環境を持ち、仕様を投げるだけで実装・テスト・PRまで一連の作業を自動でこなします。
Devinへの作業依頼はSlackで行うことができます。質問や進捗報告もSlack上で完結するため生身の人間と作業をする感覚で利用できます。

課題設定
FreeiDにDevinを導入するにあたりどのような場面で利用するか課題設定を行いました。
WebサービスやAPIの新規実装
→ Devinを初級・中級エンジニアレベルと考えると同時に開発させるのはまだ難しい。すでに導入している他のAIエージェントと開発した方がいい
顔認証のテスト
→ 実際にデバイスの操作が必要
開発済みの古いAPIのバージョンアップ
→ 優先度が低くなりがち。APIごとに作業を依頼すれば切り分けが容易
導入フロー
APIはPythonのchaliceフレームワークで開発されているプロジェクトの集合体なので、プロジェクト毎にリポジトリを切ってDevinと共有することにしました。
今回は開発現場への導入前の検証という位置付けで、
- READMEの作成
- 古いコードを丸々バージョンアップ
- 単体テストの実施
- エラーが発生した部分の修正
をSlack上で実施することにしました。
メリット・課題
実際にDevinを使ってみた感想ですが、AIエージェントのように隣に居合わせる必要が無いのは楽でした。
自分の環境に負担がかかることもなく、依頼した作業が終わったらSlackで通知してくれるため、自分のタスクに集中したり止めたりするタイミングをコントロールできるのは助かります。
Slack上で進捗管理ができるのでチームでも共有できる点も大きいです。
ナレッジベースやWikiもDevin用のコンソールに作成してくれるので、チーム内で同じAIエージェントとルールを使っているのに結果が異なるようなことが無いのは助かります。
反面コストは長時間稼働させた場合に高めになる傾向があります。
DevinはACUと呼ばれるリソースを事前に購入(月額プランは毎月一定量を付与)する仕組みで、複雑・膨大な作業を依頼する場合には注意が必要です。
今回の検証では時給換算で2,000円程度となっており、作業が終了すると休止してくれるのでアイドリングタイムが発生しないのもメリットになります。

また、開発現場におけるAIツール導入のあるあるですが依頼内容が曖昧だと見当違いの結果が返ってくるので作業の明確化や分割は不可欠です。
特にDevinは隣に居合わせる必要が無いぶん途中で軌道がズレていることに気付きにくく、生身のエンジニアを相手にするような抽象的なコミュニケーションも取れないので、依頼内容はより具体的にすることが望ましいです。
(とは言えDevinが相手なら気を遣わなくていいのはマネージャーやリーダーにとってはむしろ楽に思えるかもしれません)
細かい課題ではDevinと連携できるソースコード管理サービスは
GitHub
GitLab
Bitbucket
Azure DevOps
の4種類となっておりAWS CodeCommitは対象外です。
AIと創造性の話──『レンブラントの身震い』から
ここまではAIエンジニア Devin の導入について話してきました。
システム開発はAIとの親和性が高く、いわゆる「取って代わられる」「奪われる」という文脈で語られることの多い分野です。
一方でそうした文脈とは無縁だと考えられてきたのが 芸術 でした。芸術は人の持つ創造性の発露であり、AIには決して真似できないものだと。
『レンブラントの身震い』
しかし、その考えに疑問を呈したのが2020年に邦訳が出版された『レンブラントの身震い』という本です。

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この本はイギリスの数学者マーカス・デュ・ソートイ氏によるエッセイで、
AIによる囲碁やチェスの攻略
数学の難問の解決
アートや音楽のような芸術分野における新作発表
といった事例の紹介を通して「人とAIを隔てるものは創造性しか無いのか?」と問い掛けます。
特に芸術分野における新作発表の一例として取り上げられた2016年の「レンブラントプロジェクト」はAIが17世紀の画家レンブラントの新作を作成するといったもので、その完成度の高さから本の邦題や表紙に採用されています。
この本の最後で著者は人の創造性に対して一つの意見を提示します。
それは本の邦題とも関係してくるもので、詳しくは実際に本を手に取って確かめていただければと思いますが、後段はその意見を受けての僕自身の感想になります。
AIの創造性
上記の「レンブラントプロジェクト」はレンブラントの既存の絵画をAIが解析・学習し、その情報をもとに絵画を作成するものでした。
言ってしまえばレンブラントがいたから成立した試みになります。以前話題になったAIの美空ひばりさんや写真をジブリ風に書き換えるスクリプトもそうです。
AIは模倣することが得意です。学習データや実行環境の充実、技術進歩といったインプットの変化によっていくらでも新作を生成することができます。
しかし、0→1のような「本当に新しいもの」は創り出せるのでしょうか?
もしかしたら、と僕は答えます。
それは人の創造性の根っこもAIと同じだと考えるからです。人と話したり資料を集めたりして知識を得て、新しいツールを使い、社会を感じ取り、そうして湧き上がったものを作品に込める。
AIとの違いはそこに意思があるかどうか。
今(2025年)はまだ難しいです。恐らくずっと未来の話になるでしょう。それでも最終的にはAIに意思が芽生え、創造性を持ち得ると個人的には思います。
そもそも現時点においてAIが作り出したものを人が見抜くことができるかどうかも重要なポイントです。
AIによる画像生成で注目された下の作品がもし画像生成AIを使ったと明かされないままだったら。
「レンブラントプロジェクト」で作り出された絵画も美術館やギャラリーに展示されていたら本物と信じる可能性が十分にあります。

絵画に限らずとも今やAIで作り出された文章や写真、音楽、動画は溢れています。
人格すらSNSの投稿や性格診断テストで作り出すことができるようになり、自分がいま誰と会話しているのか、何をフォローしているのかが分からなくなる……
もっと言えば、作り出した自分の人格に取って代わられる、そんなことが起こる日もそう遠くないかもしれません。
終わりに
今回はAIエンジニアDevinの導入にAIと創造性の二本立てで書かせていただきました。
どちらのテーマもざっくりした内容となってしまいましたが、少しでも皆さんが興味を持っていただけましたら幸いです。
※この記事はDXYZ株式会社の社内LTでの発表をまとめたものです。


