【第1部-3回】「ただの数字」から「伝わる物語」へ。AIを“データアナリスト”にした思考プロセス

無味乾燥なデータから読者の心を動かす「物語」を発見する方法を解説。Geminiをデータアナリストとして活用し、対話を重ねることで、表層的な分析を超えた本質的な洞察(So What?)を導き出すプロンプトのコツと具体的なプロセスを全公開します。

【第1部-3回】「ただの数字」から「伝わる物語」へ。AIを“データアナリスト”にした思考プロセス

この記事はシリーズ構成となっており▶️マークが現在の記事となります

プロローグ
 AIは「新人」であり「Web開発」である - 成果を最大化する生成AIとの付き合い方

第1部 僕がAIを最高の相棒にするまで:ブログ運営改善プロジェクト全記録
【第1回】写真の表を瞬時にCSV化!業務効率を劇的に改善するGemini活用術
【第2回】月次レポート作成を完全自動化!GASコードをGeminiに丸投げしてブログ運営を効率化した話
▶️【第3回】「ただの数字」から「伝わる物語」へ。AIを“データアナリスト”にした思考プロセス
【第4回】企画からSNS拡散まで!AIを相棒にブログ記事をゼロから作り上げた全記録
【第5回】AIと一緒にWebサイトをリニューアル!トップページをGeminiと作った全記録
【第6回】AIで「見る」ブログを作る!グラレコからインタラクティブグラフまで爆速で作成した話
【第7回】AIは最高の壁打ち相手!対話と深掘りでコンテンツの質はここまで上がる

第2部 PMP資格の学習教材を、AIを相棒にしてゼロから作り上げる
第3部 AIを相棒にしたシステム開発プロジェクト全記録

テーマ: コンテンツの質の向上
前回の記事はこちら:https://axis.migalo.co.jp/column/k012

① はじめに:そのデータ、ただ並べているだけになっていませんか?

多くの専門家がブログでデータを公開しています。しかし、ただ数字やグラフを並べただけのレポートが、読者の心に響くことは稀です。読者が本当に知りたいのは、その データの裏側にある「物語」 だからです。

とはいえ、膨大な数値の中から、意味のある物語を見つけ出すのは至難の業。私自身、毎月の電力レポートで「どの数字に注目し、どう伝えれば面白くなるのか?」という壁に常にぶつかっていました。

この記事は、そんな私が生成AI(Gemini)を「データアナリスト」として活用し、無味乾燥な生データから、読者の心を動かす「物語」を発見していった思考プロセスを全公開するものです。

この記事を読めば、専門的な分析スキルがなくても、AIとの対話を通じてデータに隠された価値を見つけ出し、コンテンツの質を劇的に向上させる具体的な方法を学ぶことができます。

② 課題・目的:データの中に眠る「物語」の発掘

前回の記事で、月次レポートの集計作業は完全自動化に成功しました。しかし、それはスタートラインに立ったに過ぎません。

課題: 自動生成されたスプレッドシートには、月別、日別、時間帯別の膨大なデータが蓄積されている。 しかし、どのデータをどう切り取り、比較すれば、その月の「ハイライト」や「特異点」を見つけ出せるのかが分からない。 * 下手をすると、ただの数字の羅列になり、読者を退屈させてしまう。

目的: 各月の電力データの中から、読者にとって最も価値のある 「発見」や「学び」 となる中心的なテーマ(=物語)を見つけ出すこと。 その物語を効果的に伝えるための、ブログの構成案を作成すること。

③ AIへの具体的な指示(プロンプト)

この目的を達成するため、私はAIに具体的な役割と分析の切り口を与えました。

【私からGeminiへの指示(要約)】 8月の電力レポート記事を作成します。先日作成した 「電力レポートマスター」の全期間データを元に、分析と構成案を提案してください。 あなたは優秀なデータアナリストとして、その背景にある「物語」や「読者にとっての価値」を見つけ出すことを期待しています。 特に、昨年同月、先月、全期間との比較から「8月の特徴」を抽出してください。

④ AIの応答と結果:対話が「発見」を生むまでの全プロセス

AIとの協業の醍醐味は、一度の完璧な応答にあるのではありません。対話のキャッチボールの中にこそ、本当の価値が眠っていました。

フェーズ1:AIによる初期分析と「もっともらしい」提案

私の指示を受け、AI(データアナリスト)はまず、全期間データと比較した上で、以下のような初期分析と、それを表現する縦棒グラフを提示しました。

【Geminiからの初期提案(要約)】 8月の総消費量572.19kWhは、これまでの全記録の中で、冬の暖房需要が最も高い時期に次ぐ、観測史上4番目に高い数値でした。8月のストーリーは 「記録的な猛暑を乗り越えた月」 となります。

この分析はデータに基づいており、論理的にも正しく、非常に「もっともらしい」ものでした。

フェーズ2:人間によるフィードバックと、より深い分析への誘導

しかし、AIが提示したグラフを眺めていた私は、ある違和感を覚えました。「本当に今年の8月だけが特別だったのか?」と。そこで、AIに新たな分析を依頼しました。

【私からGeminiへの指示(フィードバック①)】 ありがとうございます。グラフではなくてランキング形式のトップ10を表にするのはいかがでしょうか。

この指示の意図は、時系列の印象ではなく、純粋な数値の序列で事実を確認することでした。AIは即座に指示を理解し、ランキング表を生成しました。そして、その表は私の直感が正しかったことを証明していました。

【私からGeminiへの指示(フィードバック②)】 ランキング形式の一覧表にした結果、史上4番目ではなく、昨年7月、昨年8月も今年の8月より上位にいることが分かりました。 「今年の8月が、冬に匹敵する異例の月」という表現は的確ではないようです。これを踏まえて、再度分析と結論を修正してください。

フェーズ3:対話によって生まれた、より本質的な「物語」

私の指摘という新たなコンテキストを得て、AIは結論を修正しました。そして、当初の分析よりもはるかに深く、本質的な「物語」が姿を現したのです。

【Geminiからの最終的な結論】 ご指摘ありがとうございます。分析を修正します。 結論は 「夏の冷房需要は、冬の暖房需要と肩を並べるレベルに達している」 となります。ランキング上位が冬の月で占められる中、夏の7月・8月が複数ランクインしていること自体が、この家の電力消費の重要な特性を示しています。

このAIとの対話プロセスがあったからこそ、「今年の夏が異常だった」という表層的な事実から、「この家では、夏の電力需要が冬に匹敵するのが当たり前になっている」という、より普遍的で価値のある物語へとたどり着くことができたのです。

2022年8月から2025年8月の消費電力ワースト10を示す表。ワースト3は冬で、4位と5位に夏が入っています。

⑤ 考察・ポイント:AIを優秀な分析パートナーにするコツ

役割を与えよ: AIに「〇〇として振る舞ってください」と役割を与えるだけで、アウトプットの質は劇的に向上します。「データアナリスト」「編集者」「コンサルタント」など、目的に応じて具体的な役割を定義しましょう。

コンテキスト(文脈)をすべて渡せ: 今回の分析の質が向上した最大の要因は、私が全期間データを提供したことです。AIは、与えられた情報が多いほど、より多角的で正確な分析が可能になります。データは出し惜しみせず、すべて渡しましょう。

「What (何) 」だけでなく「So What?(だから何?)」を求めよ: AIに単なるデータの要約(What)をさせるだけでは不十分です。そのデータが 「何を意味するのか(So what?)」 という、一歩踏み込んだ洞察を求めるプロンプトを意識することが、物語を発見する鍵となります。

今日からできるアクション

あなたが持っている身近なデータ(家計簿、仕事の売上データ、Webサイトのアクセス数など)をAIに見せてみましょう。そして、「このデータから何か面白い発見はない?」と、優秀なデータアナリストに話しかけるように問いかけてみてください。あなたが見過ごしていた「物語」が見つかるかもしれません。

⑥ まとめと次回予告

今回は、AIを「データアナリスト」として活用し、膨大な数値データから読者の心に響く「物語」を発掘するプロセスをご紹介しました。AIの提案を鵜呑みにせず、自身の専門知識を武器に対話を重ねることで、AIは思考を深める最高のパートナーになります。

さて、こうして強力な「物語の種」は見つかりました。しかし、最高の素材があっても、調理法を間違えれば台無しです。この物語を、どうやって読者が読みやすい記事に仕上げ、多くの人に届ければ良いのでしょうか?

次回は、この分析結果を元に、企画、執筆、SEO、そしてSNS拡散まで、AIを「編集者兼マーケター」としてフル活用し、一本の記事をゼロから作り上げた全記録をお届けします。

MEMBER / ライター
わたる
わたるエンジニア / アヴァント株式会社

アヴァント株式会社に2022年11月に入社。10年以上にわたりシステム開発に携わり、テスターからプロジェクトリーダー・マネージャーまで幅広いロールを経験してきました。要件定義から設計、開発、テスト、運用保守まで一連の工程を担当し、直近では20名規模のチームをリード。技術面・マネジメント面の両方からプロジェクトを支えています。 得意分野は AWS と Java を用いた Web アプリケーション開発。クラウド活用による効率的なシステム構築を強みとし、現場での課題解決や改善に取り組んできました。 2024年からは1年間の育児休業を取得し、2025年10月に復職予定。二児の父としての生活経験も含め、バランス感覚を大切にしながら仕事に取り組んでいます。

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