「AIは仕事を奪うのか?」入社2年目がAI EXPOで導き出した、中小SIerとエンジニアの生存戦略

入社2年目の若手エンジニアが日本最大級のAI EXPOをレポート。大手が「業務効率化」に走る中、中小SIerや若手エンジニアが生き残るための「感情に寄り添う提案力」と「顧客ニーズを観察する柔軟性」について、仮説検証を通して解説します。

「AIは仕事を奪うのか?」入社2年目がAI EXPOで導き出した、中小SIerとエンジニアの生存戦略

序文

「春が二階から落ちてきた」(伊坂幸太郎『重力ピエロ』)

これは私の好きな作品の最初の一文です。小説っていいですよね。同じ文章でも受け取り手によって印象や情景が彩られ、無数の選択肢によって紡がれる世界。

これは人の環境や思い出が違うからこそ生じる差ですが、このような繊細な感受表現もAIにとって代わってしまうのでしょうか? 小説を好きな私が、こういった未来に疑問を抱く間にもAIの発展は留まるところを知りません。そんな時、ふと上司から声をかけられました。

「AIEXPOに行ってみない?」

日本最大級のAI技術・ソリューションに特化した専門展示会「AIEXPO」、入社2年目にしてAIを学ぶためのビッグチャンスが偶然にも降ってきた(そう!二階からね)! 私は二つ返事で行くことを決めました。

今回は、AIEXPOに参加したレポートを、『仮説と検証結果』を交えてお伝えしたいと思います!

第1章「ぼんくら2年目、AIと向き合う」

そもそも私はエンジニア未経験で入社し今年で2年目。

入社当時はAIに対する知識は乏しく、日常生活でチャッピーを使う程度でした。そのため私のAIに対するイメージは、『便利で何でもできるツール』『不可能はない』というように曖昧で薄っぺらいものです。

世の中で囁かれている「AIが全ての仕事を奪ってしまう」といった話に対しても「ほーん。便利なんだなあ」程度の認識。

言わば『ぼんくら』です。しかし、入社数か月後に上流工程の会議に参加させていただいた際に私が目の当たりにしたのは、「良いシステムが必ずしもクライアントにとって良いものであるとは限らない」という現実。その後、配属された案件の上司からは「AIでの効率化は目的ではなく、人との接点を増やす手段」という言葉を頂きました。

私の中で『完璧かつ全能であったAI』の牙城が崩れる二つのエピソードです。また、一方で解像度を高めた出来事でもあります。AIが万能なツールであることは揺るぎない事実ですが、それを使うのはあくまでも人間であり、そこに焦点をあてることでAI共創時代のニーズがきっと出てくるはずです。

さて、AIEXPOに参加するにあたり、出展されている企業は約300社。

この規模を回りきるにはとてもじゃありませんが、私みたいなペーペーが3日間、開始から終了までいてようやく回りきる数だと慄いていました。朝早く起きられないので他の業務も立て込んでおり、全日程に行くことは現実的ではないため、事前に出展企業を調べ、以下の点を軸に自分なりの仮説を立て、会社を絞って調査をすることにしました。

仮説A(市場レベル)

AIEXPOの出展企業が売っているのは「業務の効率化」。意思決定の場で動く感情と、文脈を扱うサービスはほぼ存在しないはずだ。

仮説B(会社レベル)

顧客との打ち合わせにおける意思決定は、資料の質だけでなく人が場をどう読むかにも左右される。この領域において大手が対応しにくい部分が存在するとすれば、現場に近い中小SIerであるアヴァントに活路があるかもしれない。

仮説C(個人レベル)

AIが資料作成を担う時代に、2年目の自分が磨くべきは資料の精度ではなく、同じ資料を使って人の感情を動かす場の読み方と、言葉の選び方だ。

第2章「300社、どう攻める?」

仮説を立てた上で企業を絞り込むために、調査軸は上司との相談で決めた以下の4つです。

  1. 企業はどんな課題を抱えているのか
  2. その課題解決にどんなAI活用が多いのか
  3. 大手はどんなソリューションを持っているのか
  4. 大手が対応できない隙間はどこにあるのか

AIEXPOと聞いて、最初は、最先端の未来技術や研究発表が並ぶ場だと思っていました。しかし、実際に約300社のPRポイントと事業内容を読み込んでみると、印象は大きく変わりました。

まず各企業は「AI・人工知能EXPO」「ブロックチェーンEXPO」「量子コンピューティングEXPO」「AI時代の人材・組織改革EXPO」「ヒューマノイドロボットEXPO」の5つのカテゴリに分かれており、「ロボット工学・量子コンピュータ・製造業向けのAI活用」を除くと、業務におけるAI活用を扱う企業は全体の約半数です。そのうち100社以上が「業務効率化」や「AIエージェント」をキーワードに掲げていました。

事前に会社を調べた時点で、仮説Aの「出展企業の多くは業務の効率化を売っている」という方向性はほぼ見えていたため、むしろ気になったのは残りの企業です。

業務効率化でも技術展示でもない、人との関わりや感情・文脈を主眼に置いてAIを扱っている会社が果たして存在するのか。それを確かめることが当日の最大の目的となりました。

第3章「いざ、東京ビッグサイトへ」

会場に入っての第一印象は「とにかく人が多い!!!」の一言に尽きました。

行く前はエンジニア系の人たちばかりが集まっていると思っていたのですが、来場者の名札を見てみるとIT系以外にも製造業の方が多く見られました。実際にエキスポ後の集計でも、IT関係より製造関係の来場者の方が多かったようで、AIへの関心が業界を超えて広がっていることを実感しました。

そんな中、印象に残った会社が2社ありました。1社目は、人間の直感や判断力をAIで構造化するサービスを提供している会社です。「直感をルールに変える」というコンセプトを聞いたとき、正直驚きました。

直感とは経験や感覚の積み重ねであり、言語化できないものであると思っていたからです。しかしAIという「構造化の化け物」がその領域に踏み込もうとしている。人間にしかできないと思っていた部分が少しずつ削られていく感覚に陥りました。

2社目は対照的な意味で印象に残った会社で、コールセンター業務をAIで代替するサービスを提供していました。担当者が「AIでやるのが難しいんですよね」と、自社サービスの限界を率直に話してくれました。

業務効率化を謳う会社の多くが「全て自動化できます」と、ポジティブな面だけを押し出していた中で、この正直さは際立っていたと思います。できることとできないことを把握している会社の言葉には、不思議と「色々聞いてみたい!!」という感情が湧いてきました。

一方で、事前の計画通りにいかなかったこともあります。

大手企業のブースには積極的に話しかけたものの、具体的な話を聞くことはできませんでした。後から先輩に聞いたところ、大手はEXPOを情報共有の場ではなく顧客獲得の場として位置づけているため、込み入った話はしないそうです。

元々の調査設計では大手と中小の対比構造を軸にしようと考えていただけに、正直肩透かしを食らった気分でした。ただこの体験自体が一つの発見でもあります。込み入った話をせず、積極的に顧客を取りに行く様子もなかったことから、すでに盤石な基盤を持っているからこその安定感と自信のようなものを感じました。この点については次の章で改めて考察します。

こうして実際にブースを回り、各会社の出展内容を自社と照らし合わせてみると、取り組んでいるカテゴリー自体は多くの出展企業と大きく変わらないと感じました。

ただ、『AIの使い方』という点では、頭一つ抜けている印象を受けました。これは過大評価しているわけではなく、現場での実装や活用の細かさといった意味の話です。EXPOという場で改めて外から自社のブースを見た際の、「思っていたより悪くない」という感覚は、素直に自信になりました。

第4章「予想通りと、予想外と」

仮説Aの検証

事前の仮説通り、EXPOの出展企業の大半は「業務の効率化」を売っていました。

業務効率化・AIエージェント・コスト削減といったキーワードが会場のいたるところに並んでおり、100社以上が似たような訴求をしていました。正直なところ、差異を見出すことが難しいほど同質化が進んでいるという印象でした。

中でも、大手企業は顕著でした。展示内容から読み取る形になりましたが、ある大手企業の展示では「月間工数70%削減」「在庫量30%削減」「分析工数90%削減」といった数字が並んでおり、感情や文脈を扱う領域については少なくとも前面には出していませんでした。断言はできませんが、大手の主戦場は、数字で測れる効率化の領域にあるのかもしれません。

感情や文脈を扱うサービスを前面に出していたのは、大手ではなく中小企業が中心でした。

仮説Bの検証

仮説Bについては、EXPOの体験から支持できると感じています。

ビッグサイト内をまわっていて、大手よりも中小企業の方が明らかに話しかけやすかったです。展示内容について快く説明してもらえる場面も多々ありました。このことから、中小企業の方が顧客との距離が近いという仮説の方向性は間違っていないと感じました。

また自分自身がIT企業の一員としてEXPOに参加しながらも、AIに対する知識はまだまだ発展途上で、普段取引しているお客様側に近い立場だったと自認しています。そういう目線で各ブースを見ると、展示内容の難易度や説明の仕方、いかに興味を持たせるかという「客引きの上手さ」が会社によって全く異なることに気づきました。

これがまさに「感情に訴えかける力」の差でしょう。どれだけ優れたシステムでも、見ている側の興味を引けなければ意味がない。この感覚は、入社1年目の会議室で聞いた「良いシステムが必ずしも選ばれるわけではない」という言葉と重なりました。大手が数字と効率化で語る中で、現場に近い中小SIerだからこそ顧客の感情に寄り添った提案ができる。その活路は確かに存在すると感じました。

仮説Cの検証

では仮説Cのように、個人として努力する方向性は資料の精度ではなく、同じ資料を使って人の感情を動かす場の読み方と言葉の選び方なのでしょうか。これは、「正しいけれどまだ足りない仮説」だったと感じています。

大AI時代において「業務効率化」を謳う会社がEXPOの大半を占めていたという事実は、事務的な業務の自動化がすでに現実のものになりつつあることを示しています。今は細かく指示を出して作成している資料も、過去のデータをもとに「なんかいい感じに作って」という一言で完成してしまう日が来るかもしれない。そういった意味では私が頑張るべきは「資料の精度ではない」という仮説は正しいと言えます。

そんな時代に、ただシステムを売るだけの凡庸な存在になってしまっては先が思いやられます。お客様が製品を買う理由には「安定性」「低コスト高パフォーマンス」「ユニークな機能」「めちゃくちゃカッコいいセールスマン」など様々ありますが、共通しているのはそこにお客様にとっての魅力があるからに他なりません。

私が今からめちゃくちゃカッコいいセールスマンになることはできませんが「それいいね、ぜひ導入したい!」と、相手にとって魅力のある製品を開発できる人間になることは十分可能だと考えています。

自社の代表が常々語っている「営業のできるエンジニアになれ」という言葉は、まさにそういう人物像を指しているのだと思います。開発ができるだけでなく、相手にとって過不足のないサービスを提案できる人間。AIが資料を作る時代だからこそ、提案の場で相手の言葉を正確に受け取り、感情を動かせる存在になる。これこそが、2年目の自分がやらなければならないことだと感じています。

つまり仮説で立てた「人の感情を動かす場の読み方と言葉の選び方」は必要不可欠な要素ではありますが、そうした要素の根本に根付く「相手の求めているものを正確に受け取る」能力を伸ばす意識が重要と言えます。

第5章「AIEXPOに行ってみない?」

AIEXPOに初めて参加した正直な感想は「準備不足が否めない」というものです。

というのも、基本的に同じような商材が売られていると書きましたが、自分自身の知識が足りていないせいで同じに見えていた可能性があるからです。気になった企業に対しても、もっと知識があればより踏み込んだ話を聞けたのにと感じる場面もありました。

ただ、そんな自分は、見方を変えれば顧客に一番近い立場でブースを回ることができたとも感じています。実際にブースを前にして「足を止めたくなるかどうか」という感覚を頭の片隅に置いておくことが、自分の成長にとって重要な足掛かりになると考えています。

EXPOに参加し、こうしたレポートを作成することで、自分の中では会社単位でAIを使う上で最も重要なことは「柔軟性」であると結論が出ました。まだ2年目ということを盾にして大きなことを言わせてもらいますが、相手にとって魅力、言い換えるならニーズがある内容を適宜提供するということは大手との差別化でもあり、AIを使った中小企業のビジネスの最適解なのではないでしょうか。

では、私が今できることは何でしょうか。

その問いに対して自分が出した答えは「観察する」という一言に集約できます。ビジネス的な知識は後からいくらでも身につけることができますが、相手が何を必要としているのかを考える習慣は一朝一夕では身につきません。そしてそれは新人であったとしても、ビジネスに限らず日常生活からでも養うことのできる能力だと思います。

多くの収穫と反省があった今回のイベント参加。「AIEXPOに行ってみない?」この一言はEXPOに参加する前とは少し違ったものに感じられました。

MEMBER / ライター
横道世之介
横道世之介エンジニア / アヴァント株式会社

2025年アヴァント株式会社に新卒入社。AIポータル編集メンバーとして、記事制作を担当。文学系大学院で学んだ背景を活かし、難しい専門知識も“読み物”として楽しめる記事に仕立てることを目標にしています。

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